Metsä Groupバイオ製品工場で実証されたマシン監視分析サービスの有用性
2018年6月6日水曜日
新しいバイオ製品パルプ工場をフィンランドに建設するにあたり、Metsä Groupは工場全体で使用する Valmet DNAオートメーションシステムに不可欠な一要素として、Valmet DNA Machine Monitoringを選択した。マシンの条件監視アプリケーションの一環としてバルメットが提供する遠隔診断支援は、予防保全の一助として不可欠であることが実証されている。
2017年8月、Metsä Groupはフィンランドの Äänekoskiにおいて世界初の次世代バイオ製品工場の運転を開始した。バイオ製品工場といわれるのは、同工場が新しいバイオ製品によって製品ポートフォリオを拡大したこと、余剰バイオエネルギーを生成していること、化石燃料を使用していないことによる。年間のパルプ生産量は130万トンで、主に欧州とアジアに輸出される。板紙やティッシュ、印刷用紙、特殊製品向けの針葉樹および樺パルプを主要製品とする。
バルメットが同工場に納入したのは、回収ボイラー、パルプ乾燥ライン、ガス化プラント、ライムキルン、硫酸プラント、さらにバイオ製品工場を丸ごとカバーする工場全体用 Valmet DNAオートメーションシステムで、これには乾燥機のマシン制御とドライブ制御も含まれる。
Valmet DNA Machine Monitoring
オートメーションプラットフォームにおいて完全統合アプリケーションとして機能する Valmet DNA Machine Monitoringは、振動測定、および Valmet DNAプロセス制御システムのその他のマシンパラメータをもとに、マシンの状態とパフォーマンスについて計測と分析を行う。Valmet DNA Machine Monitoringは、重要なマシン類の保護、診断ツールのほか、予防保全に用いる条件監視および分析ツールも提供する。
工場の信頼性技術者である Juha Anttonen氏は、マシン監視が工場操業に欠くことのできない要素であるとして次のように話している。「マシン監視は実に多くのレベルで有用です。適切な条件監視が行われることで、限られた保全資源を適切な場所に集中させる手だてが得られます。つまり、たとえばベアリングに問題がある場合、対応策を練り、必要であればスペアパーツを発注する時間があるので、不測の操業停止を回避できます。」
機械整備工 6名のチームで工場内 14の異なるエリアを担当するため、綿密な条件監視を行う時間には限りがある。さらに Anttonen氏は次のように説明している。「システムの計測ポイントが 1,500を超える状況で、バルメットの遠隔診断支援を購入したことは賢明な判断でした。マシンの条件監視では、事前設定された警報水準を超過した場合にのみ対応を講じる必要があるわけではありません。システムの利点を最大化するためには、異常事態の発現動向についても同じく分析と追跡が必要になります。」
バルメット インダストリアル・インターネット 遠隔接続による振動分析サービス
分析および異常事態の動向追跡を担当するのは、隣接するバルメットの Jyväskyläサービスセンターに勤務するバルメットの条件監視専門家 Vesa Onnelaである。バルメットのインダストリアル・インターネットによる工場システムとの安全な遠隔接続を活用することで、工場での日常的な保全活動から解放されるため、Onnelaはシステムで計測される振動スペクトルの動向やその他の変動の検証に集中することができる。「マシンの状況や振動信号に対する専門的分析をまとめた週次レポートを、毎週金曜日に工場に送付します。約 600のポンプ、モーター、ファン、コンプレッサーとライムキルン、パルプ乾燥機、タービンを対象に、システムのさまざまな先進的ツールが問題の発見、場所の特定、分析を、的を絞って支援してくれます。すぐさま注意を要すると判断した深刻な問題は、電話によって容易に対処できます。」と Onnelaは述べている。
Anttonen氏はこの週次レポートによって問題の動向の全体像を掴むことができる。この全体像に立脚して十分に余裕を持たせた定期保全計画を作成し、工場職員が原因分析に多くの時間をあてることが可能になっている。
SAPも含めた幅広い接続性
Valmet DNAは、プロセス制御とマシン状態監視、フィールド装置管理を 1つのシステムに組み込み、その相互の影響を確認することを 1つの目的としている。たとえば、製品パラメータの変更時に振動にどのような変化を確認できるか、といったことだ。オペレーターは問題があれば直ちに警告を受けるので、迅速に是正措置を講じられる。
納入されたシステムのもう 1つの特徴はバルメットメンテナンスパッドである。これはバルメットマシンアナライザーソフトを搭載した、すべてにおいて機能的な産業用タブレット型コンピューターで、経路プラニング、経路計測および経路外計測、振動分析の効率的ツールが取り入れられている。1,500の連続振動監視ポイントのほか、オフラインで計測される 10,000のオフラインポイントがある。メンテナンスパッドは約 6,000の経路ベースの計測に使用され、過去のデータを経路の簡易分析に用いることができる。「これが、バルメットを購入したもう1つの理由です。」と Anttonen氏。さらに次のように続けている。「オンラインのマシン監視と直結したメンテナンスパッドのインターフェイスのおかげで、SAPの保全システムや、プロセス制御システムと接続した 50,000のデータポイントにダイレクトにアクセスできます。私の知るかぎりでは、これが可能な携帯型システムはほかにありません。」
稼動前にシステムが機能!
工場が操業を開始する前の回収ボイラーの圧力テストでは、潜在しているリスクが回避された。バルメットの Tampere工場でメイン給水ポンプに問題が確認されたのだが、その Tampere工場ではオートメーションシステムの一部が工場の受け渡し試験後の納入を待機している状態だった。「幸いにも工場の I/Oが接続されていたため、150 kmも離れた場所にいるバルメットの職員が振動に問題があった旨をすぐに電話で連絡してくれました。このような状況で警告を与えてくれるオートメーションシステムは、ほかに思い当りません。」と Anttonen氏は話している。
「バルメットのマシン監視と遠隔分析サービスが非常に有用であることは、工場の運転開始期に実証されました。」同氏は続けて次のように述べている。「保証の失効前に新しい設備に問題が発見されたり、潤滑に関して問題の所在が正確に特定されたり、ということが実際にありました。現代のこうした工場では、すべてが最大負荷に近い状態でフル操業されるので、連続的な条件監視は必須です。」
バルメットの遠隔診断支援により、工場の操業開始から 8ヶ月間でマシンの潜在的な問題が 200ほど確認されたが、Juha Anttonen氏には驚く事態ではなかった。「新設の工場では設備が新しく、多数の異なるサプライヤーが設置に関与していますから、こうした事態は予測されます。各種設備が耐用年数に達するまで、報告される事象は今後数年かけて典型的なベルカーブに従い減少するとみています。例外的だったのは、運転が開始して以来、マシンの振動や変速機の不具合による生産ロスや操業停止に見舞われていないということです。」
Vesa Onnelaが作成した週次レポートの簡易事例
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