セルロース系エタノール生産における難題に挑む
2018年7月27日金曜日
セルロース系エタノール生産プロセスにおいてもっとも重要でチャレンジングな領域のひとつが前処理である。バイオリファイナリーの前加水分解として利用されるバルメットの BioTracシステムは、エタノールの品質と生産量の双方に貢献する。
前処理によってセルロースを物理的にも化学的にも変成させ、続く生物工学的処理での反応性を高める。特定原料に特化して設計したプロセスにより、前処理段階の効率が大きく向上し、収率が上がり、生産されるエタノール量を最大にすることができる。前処理においては装置が非常に重要な意味を持ち、プロセスの全体の性能を最大まで引き出す上で不可欠である。
前処理におけるバランスを取る
前処理段階にはいくつかの課題があり、多くの工場で経験済みである。例えば、嵩比重の低い原材料が混合で使われることや、シリカや砂などの持ち込みが多く装置の磨耗が早い点などである。嵩比重の低い原料は高圧リアクターへの供給が容易ではない。高圧リアクターからの蒸気漏れを防止するプラグを形成する必要がある一方で、供給装置自体の磨耗を抑えるために負荷は低めが望ましいという2つの要求がある。バルメットは嵩比重の低い原料を効率よく供給するシステムを有する。
他には、原料がシステムを通過する時またブローされる時の物理的挙動も課題として挙げられる。
「これらの難題をすべて克服しなければ、不必要に糖分が失われ、阻害因子が形成され、後工程に影響が出ます。また、一定の生産量を得る上でも問題になります。セルロース系エタノール生産の原材料には供給と磨耗という 2つの大きな課題があり、これまでのバイオマス系産業での難しさよりさらに困難になっています。」とバルメットのバイオ燃料技術マネージャー Francois Lambertは言う。
(左より)バルメットのプロセスエンジニア Patric Pettersonnと バイオ燃料テクノロジーマネージャー Francois Lambert |
BioTracの優れた操業性
非木材パルプ産業や繊維板産業で得た知見をもとに、バルメットはブローラインの磨耗を最小限にし、高圧下で安全に非木材原料を供給する装置の開発に成功した。高温高圧下のシステムのため安全性の確保が大前提であり、リスクを最小限にすることが非常に重要である。BioTracシステムでは、バイオマスを圧縮しながら高圧リアクターへ安定供給できる仕組みを有し、同時に安全性が高く優れた操業性を確保している。
バイオマスの前加水分解用 BioTracシステムは、原材料に対してだけでなくプロセスにおいても柔軟性を有している。下流のプロセスに応じてパラメーターを調整でき、機器の配置も用途に応じて変えることができる。3つ以上のリアクターを設置することも可能ではあるが、1つもしくは 2つのリアクターを有するシステムが主流である。特許を取得したこの供給システムは、フォースフィードスクリューとプラグスクリューフィーダーを装備している。バルメットの薬液浸透システムは、短時間に一層の浸透が進むよう、また原料表面に薬液が残るのを防ぐよう開発されている。
「基礎研究は何年も続けられており、各種の原材料やその挙動についての知見が構築されています。1990年代以降パイロットプラントや実証プラントを建造し、お客様やパートナーと共に非木材原料についての基礎知識を一層充実させてきました。これまでに得られた知見を踏まえて BioTracシステムが出来上がりました。」と、バルメットのプロセスエンジニア Patrik Petterssonは言う。
実証された安全な装置
バイオリファイナリーにおけるバルメットの技術は、紙パルプ産業、繊維板産業で長年の間培ってきた技術に由来しており、バイオリファイナリーでの新しい課題を克服するためさらに発展してきた。前処理段階に応用する際には、非木材パルプ化と非木材原料の供給で得た広範な経験が非常に役に立った。非木材原料はカテゴリーが広く、適切な供給システムを考え出すためには各原料を個別に評価する必要がある。
バイオエタノール産業でこれまでに注目されてきたのは、セルロース系エタノール生産プロセスの下流段階だった。貴重な原料を有効活用し後処理段階を最適にするには、前処理段階を見直す必要がある。課題を克服しセルロース系エタノール生産を増やすには、実証された安全な装置が不可欠である。バルメットはパイロットプラントから商業機に至るまで、セルロース系エタノール生産における信頼できるパートナーでありその課題に果敢に取り組んでいる。