溶解パルプラインのスムーズな立ち上げ
2019年4月16日火曜日
ラオスにある Sun Paper社の溶解パルプ工場では今回初めてバルメットを採用したが、高い生産量、安定した稼働、そして環境負荷の低減の実現と、その結果がすべてを物語っている。
ラオスでの新しい溶解パルプ工場の建設を計画したとき、Sun Paper社は重要な決断をくだした。バルメットのバッチパルプ化技術に基づいて操業を行うという決断であったが、それは正しかった。新工場はラオス南部の Savanakhet州 Muang Phinに位置し、年間 25万トンの生産能力を持つ。2018年 6月に稼働を開始した。
「私たちにとってバッチ蒸解は初めての経験でしたが、今回のパルプ生産に適しており、理想的でした。この方法なら、様々な品質の原材料を処理できるからです。」Sun Paper社 ラオス工場のパルプライン生産マネジャーである Ding Xingbang氏がそう説明する。
「当社はすでに中国に溶解パルプ製造を行う連続パルプラインを2つ有しており、当社の技術チームは他のサプライヤーの連続蒸解も良く知っています。中国の工場で使用する木材はすべてオーストラリア産であり、チップの品質レベルは非常に均一です。しかしここラオスでは、原料の状況が大きく異なります。様々な種類の樹木を含む地元の木材源を使用しているからです。この違いこそが、バッチ蒸解を選択した理由の1つです。」
スケーリングの削減、稼働時間の延長
溶解パルプ生産の一般的な課題の1つは、加水分解槽とスクリーンのスケーリングだ。Ding Xingbang氏によれば、Sun Paper社の中国工場では、スケールを除去するために5、6ヶ月ごとに設備を停止する必要がある。加水分解タワー全体が時々非常に汚れるためだ。その上、加水分解タワーのスクリーンがしばしばスケールによって詰まるため、非常に危険で費用も掛かる緊急停止が生じることがある。
Ding Xingbang氏が続ける。「ここラオスでは、スケール除去ができる地元の専門保守業者がおりません。このため加水分解とアルカリ蒸解を同じ槽で行うバルメットのバッチ蒸解の方が好ましいと思いました。加水分解中に形成されるスケールは、アルカリ蒸解中に溶解します。この結果スケーリングによる生産損失と品質のばらつきの両方が削減されます。私たちはこの結果に非常に満足しています。」
チップ圧送の代わりにベルト送り
ラオスでバッチ蒸解を選択したもう 1つの理由は、Sun Paper社の中国での経験だ。連続蒸解システムではチップポンプの摩耗が大きかった。ポンプの損耗は保守作業が増えることを意味する。毎月新しい耐摩耗性材料のレイヤーが必要になる。Ding Xingbang氏によれば、ラオスではこれができないのは明らかだった。「ここでの保守は中国ほど効果的ではありません。ましてや毎回修理のためにポンプを中国に送ることもできません。バッチ蒸解はチップ圧送がないため、有利でした。」
半年も経たないうちに生産量はすでに設計能力を超えている
次のステップ: 日産 900トンの溶解パルプ
工場の立ち上げは順調に進んでおり、半年も経たないうちに生産量はすでに設計能力を超えている。2019年 1月現在、溶解パルプの生産量は、設計能力の 828トンをわずかに上回り、840トンに達している。化学紙グレードのパルプ生産は、設計目標の日産 1,020トンに対し、1,050トンに達する可能性がある。
Ding Xingbang氏によれば、次のステップは溶解パルプの生産量を日産 900トンに増やすことであり、これは実現可能だと考えている。「私たちはそれが可能だと信じています。連続蒸解と比較して、ここでは作業効率が高く、保守費用も大きいダウンタイムが、大幅に削減されるためです。」
効率的な洗浄は低 7CODのキャリーオーバーを意味する
もう 1つバルメットの技術が明らかな優位性をもたらした分野は、パルプ洗浄運転である。
「洗浄運転は、広い容量範囲にわたって非常にスムーズで、洗浄効率は優れています。」と Ding Xingbang氏は話す。「最も重要なことは、漂白へのキャリーオーバーが、私たちの 3つのファイバーラインの中で最も低いため、パルプの清浄度が最高です。漂白へのキャリーオーバーは 3 kg COD/風乾トン未満であるため、漂白剤の消費量も少なくなります。またこれは、水処理システムへの負荷と、排水からの化学的酸素要求量(COD)も大幅に減ることを意味します。」
将来に向けた地域社会への投資
Sun Paper社のラオス工場は、社会貢献にも積極的に取り組んでいる。同社が必要とする木材資源の開発、そしてもう 1つは同社の稼働を支える熟練労働者の育成である。2008年に社有林の植林を始め、10年間で約 9,000ヘクタールのユーカリを植えた。さらに同社は、地元農家が自分の畑にユーカリの木を植えることも奨励した。苗木を無料で提供し、貧しい農家を支援するプログラムも加えたと Ding Xingbang氏は語る。
建設期間中、現地では 2,000人以上の労働者が働いた。そのうち 1,200人は地元の従業員であり、この面でも地域社会の雇用を支えた。Sun Paper社と Ding Xingbang氏は、教育と訓練こそが企業と地域社会の両方にとっての持続可能な開発の基盤と考えている。
良好な協力関係
Ding Xingbang氏と Sun Paper社は、ラオスに投資することで、またバルメットのシンプルでありながら効率的なバッチパルプ化技術を選択することで、賢明な判断を行ったと考えている。このプロジェクトはやりがいがあり、また地域や会社を豊かにするものである、と同氏は強調する。「バルメットとの協力関係はうまく行っています。同社はこれまでの多くの設置経験から、様々な技術的支援を提供してくれています。蒸解および洗浄システム全体が、非常にスムーズに立ち上がりました。バルメットの専門技術者のレベルは非常に高度です。私たちの判断が正しかったことを嬉しく思います。」Ding Xingbang氏はこう締めくくった。
バルメットの納入範囲
機器および技術サプライヤーとしてのバルメットの供給範囲には、バッチ蒸解プロセス、TwinRollプレスを使用したファイバーライン全体の洗浄機器、および木粉を燃料として使用するライムキルンが含まれる。重要な点として、工場が遠隔地にあるため、バルメットは設置機器のすべてに現場保守サービスも提供している。
本文: Åsa Arencrantz, Johan Eriksson
本記事は広報誌 Forward magazine 1/2019に掲載されています。