プレスパートの効率を高めるための正しい選択
2019年10月21日月曜日
プレスパートは、抄紙機の乾燥能力および巻き取り紙走行性から最終製品の特性にいたるまで、あらゆる要素に関わる。プロセス効率向上の秘訣は、多くの場合プレスパートの消耗品を正しく選ぶことにある。
脱水の基礎
湿紙がワイヤーパートからプレスパートに到着したときのドライネスは約 20%である。プレスパートでは、ニップ圧でシートから水分が除去されるため湿紙のドライネスは約 50%に上昇する。簡単に言うと湿紙から出た水分はプレスフェルト内に押し込まれ、プレスフェルトによってユールボックス内に送られ、そこで真空作用により吸い込まれる(ユールボックス脱水)か、湿紙から除去されニップに移り、遠心力によりフェルトを通じてロールの溝に移動する(ニップ脱水)。
効率を向上させるための多くの方法が潜在しているプレス部消耗品
プレスプロセスに影響するパラメータが多く存在するため、最適化および改善のためのさまざまな選択肢が考えられる。これらには、ニップ圧、プレスフェルト、シュープレスベルトといったマシンおよび走行性に関わる問題や、ロール、ロールカバーなどが含まれる。
一般的に、最も古い設備技術を使用したマシンでのプレス脱水の改善には、例えばシュープレスの改造などの多額の設備投資が必要となる。しかし、基本的にはすべてのプレスパートは、その現在の設備レベルにも関らず、より少ない投資で改善できる潜在的可能性も含んでいる。では、どうすればいいのか?
答えは簡単である。それぞれのマシンが、定期的な交換を要するプレスフェルト、ロールカバーおよびその他の消耗品を消費する。それならば、それらを最適化するのはどうだろうか?
マシンの消耗品に関わる改善の一般的な領域
1)最適なニップ脱水およびユールボックス脱水: ニップ脱水には、フェルト期間が短い、真空能力をユールボックス以外の他のニーズに割り振ることができる等の利点がある。最も効率的な脱水プロセスは、一般的にニップ脱水とユールボックス脱水を組み合わせたものである。さらに、フェルトは、ニップとユールボックス脱水との間で脱水方向を調整する際に重要な役割を担う。ロールおよびベルトでは、開口部により、フェルトからの水分を適切に処理することができる。
2)ニップの圧力レベルとニップ圧力CDプロファイル: 巻き取り紙の CD水分プロファイルは、ロールクラウンの最適化と、たわみ補正ロールでのセッティングにより向上させることができる。ニップの圧力レベルとプロファイルが不十分だと、ロールおよびフェルトの寿命が短くなり、また余計な整備停止により生産効率が低下する。
3)ニップの振動: ニップの振動は、多くの場合ロールおよびフェルトから発生するもので、最適化で修正できることがある。振動の問題は、特にマシンの走行性およびロールの整備要件に影響を及ぼす。
実際のプレスパート最適化の例
シンプルな目標は、脱水方法を変えることによりプレスパートの効率を向上させることである。従来、方法の変更は、ユールボックス脱水からニップ脱水への切り替えを指していた。これが意味するのは、バキュームを上げず、フェルトを通してより多くの水をロール面上およびセーブオールに通水させることである。一般的な利点には、脱水効率の向上、フェルトなじみ時間の短縮、および真空容量の使用最適化が含まれる。これらの成果を達成するには、フェルトと加圧ロールの微調整が必要である。実際に、この作業は、ロールカバーの硬さ、ロール表面溝および穴パターン、ならびにフェルトの通水性および密度を調製することから構成される。直接関わる機器もチェックし、さらなる調整をしなければならない。
よくある状況では、改善を要する領域が複数存在することが多い。そのような場合はさらに困難である。一つの領域が改善すると別のところが悪化することが多いからである。上質紙を生産する機械を例にとってみよう。全般的な目的は、脱水を改善して乾燥エネルギーコストを節約することである。ところが、サクションロールのシャドーマーク、CD水分プロファイルおよびプレス振動の問題、サクションプレスロール穴の詰まりといった問題が発生する。こうした様々な問題は、各動作のタイミング、各種調節の程度、およびチームの目標が完全に釣合い調整された場合にのみ上手くいくという状況につながる。
以下の表は、改善領域と有効なツールとの相互作用を示したものである。例えば、ロールカバーの硬度を上げると脱水が向上し、それによりロールカバーの寿命が延びることがある。しかしその一方、CDプロファイルが低下しフェルトの寿命が影響を受けるおそれがある。
改善すべきエリア
主要なバルメットのツールとサービス |
脱水性能 |
製品品質(例えばシャドーマーク、バルク) |
CDプロファイル |
プレス振動 |
ロールとフェルトの寿命の確実性 |
プレスフェルト | ✔ | ✔ | ✔ | ✔ | |
ロールカバー | ✔ | ✔ | ✔ | ✔ | ✔ |
iRoll サービス | ✔ | ✔ | ✔ | ||
ロールのアップグレード(例えば Shell Flow H) | ✔ | ✔ |
プレスパート最適化の成功例
客先 | 結果 |
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蒸気の消費量が毎時 45.6トンから 40.2トンに減少
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マシン速度が毎分 30 m増加、プレスフェルトの寿命が 30日から 50日に向上
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蒸気の消費量が 5%減少
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プレス後の巻き取り紙の乾燥度が、49から 51%に増加
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Green Forest Paper | マシン速度が毎分 60 m増加 |
チームワークの力とサービス契約
プレス部に関わる改善プロジェクトを論じる場合、チームワークの力を軽視することはできない。所定の時間内で、期待された結果を達成する改善プロジェクトを進める際の最大の障害は、技術的な問題に関することではなく、異なる部門や会社から来た人間の効率的な協力に関するものであることがある。生産、整備、購買、エンジニアリング、プロセス技術、財務などなど、これらのすべての業務には、仕事やビジネスへの取り組み方についてそれぞれ独自の特徴やインセンティブがある。
すべての当事者にとって物事を明確にするには、総合的なプレス部性能向上を伴うバルメットのサービス契約を結ぶことが有益なソリューションかも知れない。この契約には通常、一定期間の定期サービス業務と、お客様の要求事項に基づいた改善プロジェクトが含まれる。相互の理解を通じて成果を生み、投じた資源を共有することがその目的である。
プレスパート最適化のためのバルメットの主な製品 |
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プレスフェルト 効率的なユールボックス脱水用の一般的なフェルト(Valmet Press Felt LMR)、重量のある開放構造と大きな隙間を持っている。 |
プレスロールカバー サクションプレスロール用 Valmet Press Roll Cover PF-V、効率的な脱水のために個々のニーズに合わせて調整された硬度および表面トポグラフィーを有する。 |
プレスフェルト 効率的なニップ脱水用の一般的なフェルト(Valmet Press Felt SPM)、軽量ながら高密度の構造、小さなすき間およびキャリパーを持っている。 |
iRoll測定 プロファイル改善用の Valmet iRoll製品ファミリー。実際の運転条件でニップ圧力プロファイルを測定するための独自のツールで、効率および品質向上のための適切な補正措置を可能にする。 |
シュープレス用ベルト Valmet Black Belt、効率的な脱水のために個々のニーズに合わせて調整された表面トポグラフィーを持っている。
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Roll upgradesロールのアップグレード Valmet Suction Roll Upgrade Shell Flow H: 脱水を向上させるためのサクションロール穴清掃システム
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本文 Juha Ruotsi & Leena Silakoski
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